DETAIL
心地よい農園とアリエッタ・ファミリー
カフェ・アルバルは、ウエストバレー、ロウルデス・デ・ナランホに位置するアリエッタ・ファミリーによる家族経営の農園で、ラ・イスラ農園を始め5つの農園を所有し、2013年に設立したブエナ・ヴィスタ・マイクロミルにて自分たちの手で様々なマイクロロットを生産しています。観光農園の側面も持ち、軒先はラベンダーやレモングラスなどの綺麗な花で彩られ、素朴ながらも丁寧にケアされた庭は優しい気品にあふれ、アリエッタ・ファミリーの温厚さがあらわれ、来訪する多くの人を癒してくれます。アルバルの名は、アリエッタのARと奥様の性バルボサのBRから名付けられています。
農園にはシェードと果樹を植え、自宅では羊や鶏を飼育し、自分たちが食べるものを作りながら、鶏糞などを利用して肥料を作り、共生を大切に自然な形でコーヒー農園を持続していきたいと考えています。
アルバルのこだわり
2013年にマイクロミルを立ち上げて以来、イギリスをはじめ、欧米のロースターを中心に高く評価されてきました。それは、アルバルの特徴が最大限発揮されるコーヒーを毎年こだわりを持って生産する真摯な姿勢と、改善を繰り返して向上させてきた品質への信頼によるものです。
種子からカッピングに至るまで一貫した品質管理を謳い、スターバックスの運営するアルサシア農園と協力し品種の研究を続け、農園に相性が良く、カップクオリティと収穫量の双方で最適な品種を模索しています。また、農園内の自然林の保護やパルプを再利用した有機肥料づくり、化学肥料や殺虫剤の使用量の削減を行う事で、環境負荷を抑えた持続可能なコーヒー生産を模索しています。放棄され荒廃した農地には、古い木を植え替える事で病害リスクを抑制し、一から耕し、区画整理をしながら、品質と生態系・環境に根差した農園づくりを心掛けました。3年~5年の中期計画を立てて腰を据えて安定した生産量を目指す計画です。農園内にはいくつもの水源があり、細かく行き届いた農園管理によって自然の恩恵を最大限に活かしています。
ブラックハニーへの取組み
今回のブラックハニーは日本のロースターに向けて、新たに取り組み生産したロットになります。アルバルでは生産処理においても、毎年実験的に100KG程度のナノロットを作成する事で品質の向上に向けた検証を繰り返しています。アルバルでは糖度がピークに達した完全完熟のチェリーの収穫を徹底している為、そのチェリーのミューシレージは分厚く、乾燥工程をコントロールすることが課題の1つでもありました。
レッドハニープロセスでは、乾燥工程をコントロールするために用いたのが、レポサドと呼ぶ収穫後に24~30時間ほどチェリーをレスティングする手法と、発酵槽を用いたフリーウォッシュドプロセスの応用でした。まずチェリーを寝かすことでパーチメント内部にミューシレージの成分を浸透させると言います。そして果肉除去を行い、発酵槽でおよそ半日の発酵工程を経て水洗します。元々ミューシレージが分厚いアルバルのウェットパーチメントは、短時間のウォッシュドプロセスを踏むことでミューシレージが約50%程度の状態となると言います。この組み合わせによって、乾燥工程のリスクを軽減しながら、レッドハニーとしての特性を維持しています。また結果的にカップの透明感が増し、気候による風味変化の軽減も解決しています。
ブラックハニーでは、逆にミューシレージの厚みを存分に活かすことを念頭にしたアプローチをとっています。ブラックハニーはその名前の通り、乾燥工程においてパーチメントの色が黒くなることから名付けられています。(ミューシレージが発酵を伴いながら乾燥されることで黒ずみ、黒ずんだドライパーチメントになる事から)
ミューシレージが黒ずむためには、ミューシレージが厚い事、そして発酵の時間を確保するために乾燥初期のドライングをゆっくりと進行させる事が大切です。アルバルにおいては、レポサドによるチェリーのレスティング工程を経て成分を浸透させたうえで、ミューシレージの厚みを活かし室内乾燥場と天日乾燥のアフリカンベッドを併用してスロードライを実践。日々の気候を見ながら乾燥の状態と日数をコントロールし、3週間の時間をかけてブラックハニーを生産しています。これによって、他のプロセスでは生み出せないブラックハニー独特のスパイシーさ、ビターチョコレートのような甘さ、豊かなマウスフィールを実現しています。
こうした独自のアイデアは、SUMAVAマイクロミルでも働く長男のエステバンが家族の農園に役立てたいと真摯に勉強しノウハウを身に着けた成果でもあります。家族の幸せとアルバルのコーヒーを楽しんでくれるバイヤーや消費者の声が高いモチベーションと語り、そのパートナーとの絆を何より大切にしてくれているアリエッタ・ファミリー。いつも心地よく迎えてくれる掛け替えのない生産者の1人です。